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ループアンテナ 鉱石ラジオ

大型のループアンテナを使用した鉱石ラジオを製作してみました。

鉱石ラジオは受信した電波信号から音声信号に変換(検波)するのに、鉱石を使ったラジオの事で、
ラジオ創成期の頃に使われていました。現在ではラジオマニアの自作対象としてよく出てきます。
現在自作する場合なのですが、本当に鉱石を使う場合もあるし、鉱石の変わりにゲルマニウム
ダイオードを使う場合もあります。回路的にはどちらも同じですが、鉱石は天然素材なので不安定で
感度も低く、放送を聞く以前に良く聞こえる様に忍耐強く調整する必要があります。

鉱石ラジオの特徴は、アンテナで受けた電波信号の力のみでレシーバーを鳴らす事です。
アンプ等が無いので電源は不要なのですが、その分音量は小さく、通常スピーカーを鳴らす事は
出来ませんし、レシーバーやイヤフォンでも僅かな音量です。そこで大型ループアンテナの登場です。
アンテナコイルは大きければ大きいほど電波を拾う力が大きくなるので、鉱石ラジオにピッタリです。
今回コイルの一周は2M、ループアンテナの枠のサイズは高さが76cmほどで製作しました。

ループアンテナ 鉱石ラジオ

アンテナコイルが大きいので、アンテナコイルとそれ以外の部分は別置きにします。別置き部分には、
同調用エアバリコンと音量を増大させるためのトランスが入っています。鉱石は端子を出して外部に
接続する様にしました。こうしておくと、後で色々な鉱石やダイオードの実験ができて便利です。



レシーバー(受話器)はハイインピーダンスタイプのヘッドフォンを使います。通常のヘッドフォンでは、
駆動にある程度の電力が必要なのでこの手のラジオではまず鳴ってくれません。主催者が持っている
のは、インピーダンスが10kΩの物です。一般的にインピーダンスが高いほど感度がいい事になるので
もしかしたらこの手のラジオに使えるかも?と思ったわけです。ちなみにこのヘッドフォンは過去に知り
合いの方から頂いた物で、本来の用途は不明です。ラジオ大阪に勤務していた方なので、放送局用かも
知れません。そのためか接続プラグの形がヘンテコリンなので、一度ジャックで受けて一般的な3.5Φの
物に変換して接続します。

エレガレシーバー

ラジオは構造がシンプルなので、受信を確認しながら製作することにします。まず、アンテナコイル
の巻き数ですが、実験の結果、14周ほどでほぼ中波帯をカバーしました。他にポイントとなるのは
トランスです。放送を聴きながら最も音量が大きく聞こえる物を選んで取り付けます。で、その時に
鉱石では受信具合が良く分からないので、変わりにゲルマダイオードで検波しながら製作します。

完成したらいよいよ鉱石での検波です。まず、探り式鉱石検波器です。(下の写真左)

探り式とは、鉱石の断面に針金を接触させ、最もよく聞こえる場所を探して固定する、と言う方式で、
一番古いタイプの検波器です。探る場所が悪いと10分経っても放送を聞く事ができません。が、今回
すぐに放送が聞こえました。針を鉱石に押し当て、少し戻したところで最も音が大きく聞こえました。
ううむ。なんか知らんがついているぞ。音量はかなり大きく、ゲルマダイオードの80%ぐらいでした。

探り式はうまくいったので、次は固定タイプの鉱石を使ってみます。(下の写真右)

固定タイプとは鉱石(人造ガレナ)を筒に入れ、スプリングで押し当てた構造のものです。上にある
探り式は構造上振動に弱く、ラジオの後ろを人が通り過ぎただけで受信できなくなったりします。
その点、固定式はラクです。で、早速ラジオに接続してみました。・・・受信はできましたが、音量は
かなり小さい。ゲルマダイオードの30%ぐらい。固定鉱石の場合、鉱石の筒側面の調整穴にピンを
入れてスプリングの調整を行うらしいのですが、それでは鉱石のラベルを破ってしまいます。それは
忍びないので、まあ受信ができたと言う事でよしとします。

鉱石検波器

鉱石の動作確認ができたので、次に受話器の実験をしてみました。下の写真で上の段の左から、
圧電タイプのクリスタルイヤフォン、ハイインピーダンスマイクロフォン、先ほどのヘッドフォンです。
下の列が、ロッシェル塩タイプのクリスタルイヤフォン、ロッシェル塩タイプのマイクエレメント2種です。

まず、圧電タイプのクリスタルイヤフォンですが、現在の商品と言うこともあり、ガンガン聞こえます。
次のハイインピーダンスマイクロフォンですが、これまたよく聞こえます。これは昔のテープレコーダー
用のマイクと思われます。インピーダンスは10kΩ。横のヘッドフォンもそうですが、ダイナミックタイプ
と言うこともあり、音質はかなりいいです。

下の段のロッシェル塩タイプのクリスタルイヤフォンは、音量はガンガン聞こえますが、低音はほぼ
聞こえずハイ上がりです。横のエレメントタイプのマイクも同じ構造ですので、音質も同じでした。

鉱石ラジオ用受話器

次はスピーカーです。マグネチックタイプのスピーカーを2台持ってきました。一台は家電機器の
コーナーで紹介しているラジオに使われているラッパスピーカーです。マグネチックなのでそこそこ
鳴るかと思いましたが、かすかに聞こえる程度でした。横の電話の受話器の付いたスピーカーも
かすかに聞こえただけ。ラジオに内蔵しているトランスがレシーバーとかイヤフォンに合わせて
選定してあるので、このあたりが関係しているのかも知れません。

マグネチックスピーカー

なお、本機のアンテナは折り畳む事もできます。折り畳めないと収納時にかなり困りますからね。
このラジオの性能ですが、本体のループアンテナだけで他に外部アンテナ等は接続せず、検波は
ゲルマニウムダイオードを使用すると言う条件で、一番良く聞こえる放送局のみを捉えると、一石
レフレックスラジオとほぼ同等に聞こえました。

実はこのラジオを他のラジオのアンテナ端子につなぐと、つないだラジオの感度がかなりアップします。
鉱石ラジオとして使用するより、他のラジオの外部アンテナとして使用する方が実用性があったのでした。





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